トマス・アクィナス『ディオニシウス「神名論」注解』訳(津崎幸子『美の形而上学』による)

テキストは、現在最良のMarietti版による。

 

In Librum Beati, De Divinis Nominibus Expositio

 

第五講

132. Hoc bonum laudatur sanctis theologis et sicut pulchrum  et sicut pulchritudo et sicut dilectio et sicut diligibile.

Hoc : 代名詞 hic 単数 中性 主格 この  bonum : bonum 名詞 単数 中性 主格 善    laudatur : laudo 三人称単数 現在 直説法 受動相 讃える  sanctis : sancio 分詞  複数  theologis : theologus 名詞 複数 男性 奪格 神学者  et : 接続詞 and  sicut 副詞 〜のように  pulchrum : pulcher 形容詞 単数 中性 対格 美しい   et : 接続詞 and  sicut : 副詞 〜のように  pulchritudo : pulchritudo 名詞 単数 女性 対格 美  et : 接続詞 and  sicut : 副詞 〜のように  dilectio : dilectio  名詞 単数 女性 愛  et : 接続詞 and  sicut : 副詞 〜のように  diligibile : 愛すべき

[ 訳 ] この善なるものは、神聖な神学者たちによって美しいもののように、また、美のように、また、愛のように、また、愛すべきもののように讃えられる。

 

津崎幸子『美の形而上学』の中にトマス・アクィナスの『ディオニシウス「神名論」注解』の日本語訳があり、よく出来ていると思うが、書名がトマス・アクィナスと関係が希薄に思われるので、トマス・アクィナスに関する書籍と思われないのではないだろうか。

邪馬台国の場所

魏志倭人伝』を朝日文庫の『邪馬台国』の読み下し文に従って書す。

倭人、帯方の東南の大海の中に在り。山島に依りて国、邑を為す。

始めて一海を度り、千余里にして対馬に至る。

東南して奴国に至るまで百里

南のかた邪馬台国に至る。

奴国が九州博多にあるのならば、邪馬台国は、九州にあったということになる。

プラトン『Θεαίτητος テアイテトス』日本語訳(OCT)

[142α]


Εὐκλείδης
ἄρτι, ὦ Τερψίων, ἢ πάλαι ἐξ ἀγροῦ;

Τερψσίων
ἐπιεικῶς πάλαι. καὶ σέ γε ἐζήτουν κατ᾽ ἀγορὰν καὶ ἐθαύμαζον ὅτι οὐχ οἷός τ᾽ ἦ εὑρεῖν.

Εὐκλείδης
οὐ γὰρ ἦ κατὰ πόλιν.

Τερψσίων
ποῦ μήν;

Εὐκλείδης
εἰς λιμένα καταβαίνων Θεαιτήτῳ ἐνέτυχον φερομένῳ ἐκ Κορίνθου ἀπὸ τοῦ στρατοπέδου Ἀθήναζε.

Τερψσίων
ζῶντι ἢ τετελευτηκότι;

 

[142α]


Εὐκλείδης
ἄρτι, ὦ Τερψίων, ἢ πάλαι ἐξ ἀγροῦ;

 

エウクレイデス

ちょうど今か、テルプシオン、それともずっと前から戻ってきたのか。

 

 Εὐκλείδης エウクレイデス

ἄρτι ἄρτι 副詞 ちょうど今

ὦ 呼び掛け

Τερψίων テルプシオン

ἢ 逆接の接続詞 それとも

πάλαι 副詞 ずっと以前

ἐξ 前置詞 ~から

ἀγροῦ ἀγρέω 二人称単数 未完了過去 直説法 中動相 戻る

; 疑問符 英語の?に当たる。

 

 

Τερψσίων
ἐπιεικῶς πάλαι. καὶ σέ γε ἐζήτουν κατ᾽ ἀγορὰν καὶ ἐθαύμαζον ὅτι οὐχ οἷός τ᾽ ἦ εὑρεῖν.

Εὐκλείδης
οὐ γὰρ ἦ κατὰ πόλιν.

Τερψσίων
ποῦ μήν;

Εὐκλείδης
εἰς λιμένα καταβαίνων Θεαιτήτῳ ἐνέτυχον φερομένῳ ἐκ Κορίνθου ἀπὸ τοῦ στρατοπέδου Ἀθήναζε.

Τερψσίων
ζῶντι ἢ τετελευτηκότι;

 

アリストテレス『Metaphysics』(OCT)

 

πάντες  ἄνθρωποι  τοῦ εἰδέναι  ὀρέγονται  φύσει.

[訳] 全ての人は、自然に知識を切望する。

πάντες πᾶς 形容詞 複数 男性 主格 全ての  

ἄνθρωποι ἄνθρωπος 名詞 複数 男性 主格 人

τοῦ εἰδέναι 動詞 未来 不定法 能動相 知識

ὀρέγονται ὀρέγω 三人称複数 現在 直説法 中動相 ~を切望する

φύσει φύσις 名詞 単数 女性 奪格 自然

北嶋忠夫『羅甸語初歩』 ラテン語 Latin

北嶋忠夫の『羅甸語初歩』は、他のラテン語の参考書にはない特徴があり、大変優れているラテン語の参考書だと思う。

 

翻訳への暗示

 

第一に直説法の動詞を探し出す。直説法の動詞は、普通一つの文章の最終かその近くにある。この動詞は単数形か複数形かを見、それから、名詞か代名詞かの主格を探し出す。それが単数か複数かの動詞の数と一致する単数か複数かを見る。

 主格は大体文章の首頭部近くにある。

 見出だした動詞の意味することからもしもその動詞が目的語を持っていたら、目的語を決定することが出来る。

 目的語は対格の名詞か代名詞である。ここで、ラテン語の一般法則として、各句の起頭の詞は(普通接続詞か関係代名詞であるが)先行する句にその句は結び付くことを注意せよ。

 主格か対格かの名詞は、そこの形容詞と一致する。

 接続詞主格か形容詞をもった主格対格か形容詞をもった目的語動詞、この四つのものを除けば一文章において、幾らかの詞か句が残されるであろう。これ等は普通奪格か、與格か属格における名詞か形容詞である。奪格と與格は常に殆ど近くの動詞と連結しており、属格はある名詞と連結している。

 

ラテン語の訳し方が大変詳細に書かれていると思う。

 

 

高津春繁 『ギリシア語読本』(要書房)

『比較言語学』『比較言語学入門』『アルカディア方言の研究』の著書もある高津春繁の『ギリシア語読本』は、古代ギリシア語の参考書としてとてもよく出来た参考書だと思う。古代ギリシア語の参考書としては、これ以上はないのではないだろうか。

 

ἐπαίδευονのἐ-はaugmentと称し、過去を表す。ἐ-をつけた語幹はつけない語幹とは異なる人称語尾を取り、之を第二次、そうでないものを第一次という。この区別は文法では大切である。

 

古代ギリシア語の良くできた参考書というものは大変少ないが、英語のように良くできた参考書が出来てもいいと思う。

 

 

 

池辺八洲彦『科学英語に強くなる』 

講談社ブルーバックスには英語に関する書籍もあり、池辺八洲彦の『科学英語に強くなる』は、OEDについてとてもよい解説がされ、とてもよい参考書だと思う。

 

 OEDには解読できないような文例が実に多い。参考書片手の古英語、中英語解読はまるで「蘭学事始」だ。OED の古英語、中英語からの全ての文例に現代英語への直訳と現代英語訳の両方が提供されていたらどんなにOEDの利用価値が高まる事かと思う(ついでながら「こなれた訳」とともに直訳も必要となる例がこの場合である)。

 

このOEDを書籍のように正確精密に読むという態度は必要なことではないだろうかと思う。又、古、中英語の知識ということも非常に大切だと思う。