青木常雄『英文解釈の研究』

Whoever has to deal with young children learns that too much sympathy is a mistake. Children readily understand that an adult who is sometimes a little stern is best for them ; their instinct tells them whether they are loved or not , and from those whom they feel to be affectionate they will put up with whatever strictness results from genuine deire for their proper development.

 

 本問も第一文が Key Sentence となる。だからまず第一文を征服し、その上でその内容を頭に入れて第二文を以下を読む練習をしよう。

 第一文 Whoever has to deal with young childrenまでが主語。「小さな子供たちを相手にせねばならぬ人は誰でも」。例えば母親とか、乳母とか、幼稚園の先生とか。learns = comes to know = 「知るようになる」。learns that too much sympathy is a mistake. この名詞節はlearnsのObjectだ。「あまり多くの同情は誤りだということを(知る)」子供は可愛がってやるがよい。同情も必要だが、同情も過ぎては誤りだ、とさとるのである。さてその続きは?

 第二文の前半は Children readily understand that an adult who is sometimes a little stern is best for them ; 迄だが、これは前文の要旨「子供に対してあまり同情し過ぎるのは誤りだ」の理由らしい。細かに調べてみよう。Children readily understand「子供たちはすぐに了解する」。何を了解するのか。that...以下のことを了解するのだ。

 全体は「子供たちは、時には少し厳しい大人が彼らに一番ためになるということを容易に了解する」となる。なるほどこれは「子供に過度の同情は誤りだ」の理由の一つだ。さて後半はどうだろう。

 後半は instinct tells them whether they are loved or not で始まっている。まずこの部分の意味を確かめよう。これも第一文の所説の理由と見られるだろうか。their instinct tells them whether they are loved or not の斜体の部分は名詞節で、tells の直接目的。「子供たちの本能は子供たちが愛されているかいないかを子供たちに告げる」。自分達が愛されているかいないかを、小さい子供たちは本能で知るのだから愛されていると思えば、少しぐらい厳しくされても何とも思わない、というのであろう。ここまでは第一文の論旨が通っている。さて最後が本問の「山」である。落ち着いて読まないとやり損う。

 最後の部分は and from those whom they feel to be affectionate で始まっているが、 and は「そして」でよいか「だから」の方がいいか。先を読まぬと判断がつかぬ。affectionate = full of affection = 「愛情豊かな」。those whom they feel to be affectionate = 「子供たちが愛情豊かだと感じる人たち」すなわち「子供たちが自分達を愛してくれると思う人たち」のこと。 put up with ~は「~を我慢する」。何を我慢するというのだろう。whatever strictness results from genuine deire for their proper development がそれだ。この Noun Clause が put up with のObjects なのだ。落ち着いて考えなくてはいけないと言ったのはここのことだ。何度も繰り返して読んでみる。単語としては strictness = 「厳格」「きびしさ」。results (from~)はPredicate Verbらしいが、主語は何だろう。strictness だろうか、whatever strictness  だろう。whatever は複合(または合成)関係代名詞だろうか、複合(または合成)関係形容詞だろうか。genuine desire = true desire. 最後のproper  development は「適当な進歩・発展」か「正しい成長」か。何といってもwhatever が難しい。少し横道に外れるが、次の諸例を見よ。

 cf.  a) l read whatever is interesting.

          b) l read whatever book is interesting.

 a)のwhatever は関係代名詞で anything that と言い換えられる。だから l read whatever is interesting .= l read anything that is interesting. = 「私は面白いものなら何でも読む」。

 さて本問の whatever strictness results from... はb)の whatever book is interesting と形が似ているから、関係形容詞と考えて言い換えてみると、whatever strictness results from... = any strictness that results from...「...から来るところのどんな厳しさでも」。これでよさそうだから from those whom they feel to be affectionate から終りまで訳してみると、「子供たちは、子供たちを可愛がってくれると感じる人たちから子供たちの正しい成長への真の願望からくるどんな厳しさでも我慢するだろう」となるが、このままでいいだろうか。from はいつも「から」とばかり訳さず工夫することが肝要だ。From the look of the sky, we shall have rain this afternoon. なら「空模様から判断すると午後は雨だろう」となるように。本問の from those whom they feel to be afectionste は「子供たちを可愛がってくれる人たちからならば」とするといい。その前のさっき預かっておいた and は「だから」が適訳。

【試訳】幼い子供たちを相手にせねばならぬ人ならば誰でも、過分の同情は誤りだと知る。時々少し厳しくしてくれる大人が子供たちに一番ためになるということを子供たちは容易に了解する。子供たちの本能は、子供たちが愛されているかいないかを子供たちに教える。それだから、子供たちを可愛がってくれていると子供たちが感じる人からなら、子供たちの正しい成長を真に望んでの厳しさなら、どんな厳しさでも我慢するだろう。

この書籍は、全体の内容をよく考えて訳しているところが他の書籍と違うと思う。